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Vol.11 生活と音の危険な関係? 音量は控えめに。 

またまたコロナの脅威がぶり返してきて、落ち着かない日々が続いています。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。ライターのタラです。

先日、妙に眠い日があり、早めにベッドに入りました。いい感じでウトウトしていると、突然耳元で「ピューン」という音が。そう、蚊です。無視して寝ようとしましたが無理。結局、始末するまで20分ほど格闘し、何だか眠気も覚めてしまったのでした。

こんな不快な音から、逆に心地よい音まで。生活にはさまざまな音が潜んでいます。少しだけ、耳を傾けてみましょう。


昭和49年、夏。神奈川県平塚市の県営住宅で、母娘3人が上階に住む男に刺殺される凄惨な事件が起きました。犯行に至った動機は「階下から聞こえる“ピアノ”の音がうるさかった」というもの。

暮らしていれば、さまざまな生活音が聞こえてくるのが当たり前だった時代。もしかしたら「騒音」という概念もそれほど浸透していなかったかもしれません。そんな中で起こった、騒音トラブルが原因の殺人事件に世の中は震撼したそうです。うるさくしたら、事件に巻き込まれる可能性がある。決して対岸の火事ではなく、誰にでも起こりうる悲劇。

事件以後、社会、そして人々は「騒音意識」と向き合うことを余儀なくされていきます。その契機となったのが、この「ピアノ騒音殺人事件」といわれています。

 

いきなり物騒な話になってしまいましたが、確かに決して他人事ではありません。

僕がまだうら若き学生の頃。一人暮らしのアパートに、結構酔っぱらって帰ってきました。着の身着のまま、いい気分でベッドにダイブ。多分、夜中の二時くらいだったと記憶しています。いささか酔いすぎたせいか、気持ち悪くて寝付けないでいると、隣の部屋から何やら音が。少しうるさいなと思っていたのですが、だんだん騒ぎは大きくなります。どうやら友達を呼んで、部屋で飲んでいるようでした。笑い声が壁越しに聞こえてきます。

眠いのと気持ち悪いのとうるさいので、変なゾーンに入ったのでしょう。僕は思い切り壁を殴って、「うるせー!」と怒鳴りました。何故か、その後どうなったのか記憶がありません。ただ、翌朝目覚めると、殴った壁がへこんでいました。

以降、隣室の音が気になることは何度かありましたが、後にも先にも、壁を殴って怒鳴るなんてことをしたのはこれ一回だけです。酔っていたせいも大いにありますが、騒音がきっかけで行った暴挙に違いありません。

もし、隣人が逆ギレしてくるようなことがあったら、と思うとゾッとします。もっと大きな事件に発展していたかも……。たかが騒音、されど騒音です。

 

 

ここで少しだけ専門的なお話。

人間は音を右脳と左脳で聞き分けています。右脳は音楽脳と呼ばれ音楽や機械音、雑音を処理する役目を、左脳は言語脳と呼ばれ人間の話す声の理解など、論理的・知的な処理を担っていると言われています。

ここで面白いのは、例えば「犬の鳴き声」をどちらの脳で処理するかということ。世界中の大半の人間は右脳で受け止めるそう。つまり、どれだけうるさい犬の鳴き声もBGMのように聞き流すことができ、慣れれば気にならなくというのです。

しかし、その大半に日本人は入っていません。日本人とほんの一部の人種に限り、犬の鳴き声を左脳で処理しているのだそう! つまり、鳴き声を「言葉」のよう受け止めて、一生懸命理解しようとする脳の作りになっているということです。ともすれば、それがストレス要因にもなりえることも……。

そういえば、僕が昔住んでいた部屋は線路の近くでした。当初は電車が通るたびに「うるさいな」と感じたものですが、次第に慣れてしまいました。しかし、夏場。蝉がミンミン鳴く声にはずっと悩まされ続けました。友達が来た時、「蝉うるさいでしょ」と尋ねたら、「それよりも電車がうるさい」と言われました。こういうことなのでしょうか。

他にも波や風、雨音や小川のせせらぎ、ハミングなども、左脳で処理するのは日本人特有とのこと。日本人が情緒的と言われる所以は、案外「耳」にあるのかもしれませんね。

 

 

さて、日常生活は、どんな強さの、どんな音にさらされているのでしょうか。

工事現場などで(現在の騒音〇〇デシベル)と表示された騒音計を見かけたことがあると思います。これはそのまま、今どれだけ強い音が出ているのかを表示するもので、一般的にはデシベルという単位で表されます。

厳密には細かい計算があるようですが、数値が大きければそれだけ「うるさい」ということ。日常生活において、うるさいと感じるのは大体「60デシベル」以上。洗濯機やテレビ、トイレの洗浄音、走行中の車内、デパート店内の喧噪が、だいたい60デシベル程度です。

80デシベル以上だと我慢できないレベルとなり、これは間近で鳴く犬やカラオケの室内、地下鉄の車内、麻雀牌をかき混ぜる音、ブルドーザーの駆動音などなど。

100デシベル以上となるともはや聴覚機能に異常をきたす可能性も(ジェット機エンジンの近く、真横で鳴る自動車のクラクション、電車の高架下での通過音)。気が変になりそうです。

一方、睡眠時に関しては40デシベル以下でないと安眠には適さないという報告もあります。おおむね図書館程度の静けさです。

しかし静かすぎると、逆に突発的な音に敏感になりがち。むしろ、出所が分かっている音の方が気にならないとも言います。その点では、あえてBGMを流しながら寝るというのは効果的なのかもしれません。自然音でもよし。ヒーリング音楽でもよし。好きなお笑いの漫談でもよし。落ち着ける音で、あらかじめ他の音を覆い隠してしまうというイメージです。

 

 

先日、用事があって弟の部屋に行きました。扉の向こうで何やら音が聞こえます。ノックして入ると昼寝をしており、音の出所はスマートホン。何を聴いているのかと耳を傾けると、怪談でした。不気味な語りが流れていますが、それよりも怖いのは怪談を聴きながら寝ている弟。最近、寝ても疲れ取れないとよく愚痴っているのですが、「そりゃそうだろう」と心の中で突っ込むのでした。

みなさんも、寝る際の音選びはどうぞ慎重に。

 

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