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Vol.16 眺望はプライスレス。その窓から見えるのは?

梅雨シーズン到来。普段、配達の仕事をしているので雨の日はテンションがあがりません。合羽を着れば蒸れるし、その恰好で車に乗れば座席はビチョビチョ。配達物が濡れないように気も使い、まさに百害あって一利なし。かなりの雨男、ライターのタラです。

先日、部屋の空気を入れ替えようと久しぶりに窓を開けました。そこから街が見えたり、自然が飛び込んでくるような景観ならばきっと気持ちいいのでしょう。が、残念ながら我が家の裏がホテルで、見えるのは壁と非常階段と駐車場。たまに従業員さんも通るので、開けっ放しにしておくこともできず、そっと窓を閉じました。

ということで今回は、窓から見える景観、眺望についてあれやこれやと考察します。


忍者ハットリ君やオバケのQ太郎でお馴染みの漫画家、藤子不二雄A先生。数ある人気作の中で、僕がもっとも好きなのが、人間の業や欲を描いた「笑ゥせぇるすまん」というブラックユーモアたっぷり漫画。アニメや実写にもなっているので、古い作品ですが知っている方も多いのでは?

その中に「見おろす男」というエピソードがあります。

卑屈で常に人に見下されてきたサラリーマンが、その性格を変えるために高層ビルの屋上で暮らし、人や街を「見おろす」生活をすることで人格改造を目指すお話。みるみる顔つきや言葉使いが変わり、誰に対しても自信を持って接することができるようになるのですが、結局は……。

実際、高層階から「見おろす」生活が人格に影響するかどうかは知わかりません。が、ある種窓から見える景色、眺望自体はステータスと言えるでしょう。

我が家のように見えるのがコンクリートの壁なのと、例えば駿河湾が一望でき、晴れた日には伊豆半島あたりまで見え、もちろん富士山もばっちりと確認できる絶景。どちらを選びますか、という話です。

昨今続々と建設されるタワーマンションでも高層階ほど高額です。その理由は、戸数が少なく間取りが広い、防犯性が確保されている、日当たりが良い、虫が入ってこない等々の理由がありますが、もっともウリになるのは「眺望・見晴らしの良さ」だと言われています。眼下に広がる街並み、その解放感は、実際に高い所に行かなければ手に入らないものです。それは成功者の証かもしれません。

かつて、成功者のステータスと呼ばれたのが「六本木ヒルズ」に住むこと。多くのIT長者たちがこぞって入居したと聞きます。そしてその最上階に住んでいたのがホリエモンこと堀江貴文氏との噂が。時代の寵児となったホリエモンらしい?

非常に分かりやすい構図ですが、確かに映画やドラマでも企業の社長や会長、その他「偉い」とされる人たちのほとんどは、高層階に棲息しています。そして、眼下に広がる街並みを見下ろしながら、だいたい不敵に笑ったりするのです。

ちなみに、市内でも一、二の高さを誇るタワーマンション、その高層階に住んでいる友人がいます。ちょくちょく遊びに行くのですが、やはり窓からの眺めは絶景。最初のころは窓の外を眺めては「あれ、〇〇〇じゃね? あんな所まで見えるんだ!」とはしゃいだものです。

他人のふんどしで相撲を取るがごとく、謎の優越感を感じながら飲むお酒はまた格別。絶景に酔っていると言い聞かせつつ、毎度ベロベロになっているのです。

 

 

とまあ、ここまではどちらかと言えば気分的(?)な話。では、実際に心身にどんな影響があるのでしょうか?

こんな研究報告があります。とある集団を二つのグループにわけ、居室を割り当てます。Aグループの窓からは殺風景なコンクリート建造物や駐車場しか見えない部屋。Bグループの窓からは木々や花壇など自然が見える部屋。この2グループについて、基本的な注意力テストやストレスチェック、集中力検査から重大問題への対処方法まで、さまざまな評価を行ったのです。結果、自然が目に入ってくるBグループの方が、あらゆる項目でAグループよりも良好な結果が出たとのこと。

また似たような実験は病院でも報告されています。簡単に説明すると、病室からの眺望が外科手術後の回復に影響するかどうか、というもの。上述の研究と同様、自然が見える部屋と人工物(ブロック塀)しか見えない部屋で、二つの患者グループが療養。部屋の調度品や窓のサイズ、スタッフのサービスレベルに差異はない条件で経過観察。結果はやはり、自然が見える部屋の患者の方が入院期間が短く、いらつきや泣き言、落ち込みなどのネガティヴな動向も減り、鎮痛薬の量も抑えられたそうです。

 

そういえば、母が入院していたときのこと。結構長期間の入院で、何度か部屋の移動がありました。窓際のベッドのときは起きてよくテレビを見たり、読書をしていました。一方、窓が見えないベッド(大部屋の真ん中など)のときは、たいてい寝ていたように思います。口には出しませんでしたが、やはり気分的に沈んでいたのでしょう。

入院患者の中では窓際のベッドの方が人気だという話を聞いたことがあります。仮に窓から見える景色が殺風景だったとしても、窓は外界との繋がりを感じさせます。図らずも入院という形で不自由を強いられる中、窓の向こうの「日常」を求める気持ちは何となく想像できますね。

無論、眺望の良し悪しや窓の有無で、病気が治るわけではありません。しかし、少なくとも心のリフレッシュやケアを促し、回復の一助とはなっているのではないでしょうか。まさに「病は気から」です。

 

 

さてさて「眺望は大切」といっても、窓からの景色そのものを変えることはできません。それこそ引っ越す以外に方法はありません。ということで、最後にイマイチな眺望を少しだけ改善するアイデアをご紹介します。

すぐにできるものでは、カラフルなカーテンやブラインドを使うというもの。特に近隣との距離が近く、どうしてもカーテンを締めっぱなしにしなければならない場合、思い切った色や柄物を使ってみては? 機能も大事ですが、視覚から入ってくるイメージも同じくらい重要です。ブラインドも白やグレーなどの無難な色ではなく、ドット柄やストライプなど種類は豊富。それだけで部屋の雰囲気はガラッと変わるはず。トイレの小窓なんかにオススメ!

ナチュラル感を演出するならば、窓辺に植物を置くのもあり。インテリアにもなり、花によって季節感も演出できます。外が駄目なら中、です。

少し手間はかかりますが、窓を曇りガラスにするのも手。眺望をぼやけさせつつ、外からの光はそのまま確保。しかも入ってくる光自体は柔らかくなるので、部屋の雰囲気もグッとおしゃれになります。ちょっとお金がかかるのがネックですが……。

と素敵な眺望を夢見ながら、20年来使い続けている、タバコで汚れたカーテンを締め切った部屋で、今日も今日とて原稿を書くのでした。

 

 

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