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Vol.49 強固な家は意識から。防犯対策虎の巻。

配達員にとっては最悪のシーズン、梅雨。朝から雨だと一日が憂鬱です。雨も最悪ですが、雨合羽を着ることによる「蒸れ」も厳しい。昼休憩時には脱いで、午後また濡れた合羽を着る感触は筆舌に尽くしがたいものなのです。自他共に認める雨男、ライターのタラです。

雨に打たれながらも配達業務は休みなしなのですが、先日配達に行った際、とあるお宅の前にパトカーが止まっていました。空き巣に入られたようで、その聴取の最中でした。

確かに僕が配達する地域は田舎なせいか、施錠していない家も結構あるのですが……。

ということで、今回は家を、暮らしを、自分を守る防犯の話。

なるべく役に立つ情報を提供できれば、と思っています。どうぞお付き合いください。


かれこれ20年以上前になるでしょうか。我がおもちゃ家がまだ活発に店をオープンしていた頃のことです。

当時はまだ店内にたくさんのおもちゃがありました。お客さんもちょくちょく入ってきては、店内を物色していきます。店番をするのは主に祖父と母。そんなに広い店内ではありませんが、二人では目が行き届かない所もありました。

それでも昔ながらの商店街ですし、お客さんは基本子供。妙なことなど起きないだろうと、まあジロジロ見て、付いてまわるような接客はしていなかったわけです。

それどころか、お客さんがいても普通に居眠りしたり、TVを観ていたりと、接客態度としてはお粗末だし、防犯面でもスカスカでした。

ある日、事件は起きました。

店内をグルグルと物色している小学生くらいの子供。ただ見に来るだけのお客さんも普通にいますし、特に声もかけなかったそう。気が付くとその子はいません。飽きて出て行ったのだろうと、店内を見て回ると吃驚。そこには中身を抜き取られて、ゴミとなったパッケージの残骸が。しかも当時人気だった某番組の変身ベルト。5000円以上はする商品です。

「怪しいと思っていた」「こちらをチラチラうかがっていた」

と祖父と母は愚痴っていましたが、後の祭り。警察に被害届は出しましたが、防犯カメラがあるわけでもないし、顔をはっきりと覚えているわけでもなし。結局、何の解決もできないままでした。

それ以降、一応店内に「万引きは犯罪」などの警告用ポスターを貼ったり、死角のないように店内レイアウトを変えたり、遅き対策は取りました。

ちなみに我が家の事件がきっかけというわけではありませんが、商店街には監視カメラも設置。隣近所を疑うようで嫌だという声もあったようですが、ひと昔前まではなかった深夜営業の居酒屋や大きなマンションが増え、商店街も変わらねばならなかったわけです。これも時代の流れでなのしょう。

 

 

「ダ・ヴィンチ・コード」という作品を覚えているでしょうか。小説がベストセラーになり、映画化もされ大ヒットしたミステリーです。物語の中に、世界的に有名なルーヴル美術館のセキュリティに関する描写があります。

「モナ・リザ」や「ミロのビーナス」、「サモトラケのニケ」など、世界的に著名かつ歴史的価値のある作品が多数展示、収蔵されているルーヴル美術館、当然そのセキュリティは超厳重。何台も監視カメラが設置されているわけですが、そのほとんどはダミーだと明かすのです(小説ではそう書かれていましたが、実際どうなのか調べても判明しませんでした、悪しからず)。

実際に全てをカメラで撮影する必要はなく、「お前を見ているぞ」と威嚇、アピールするだけで犯罪に対する抑止力になるということなのだそう。

 

 

監視カメラを設置して、ドアに鍵を二つ付けツーロック仕様に変更し、窓を割れにくい防犯ガラスに変え、玄関前や庭先に踏むと音が鳴る防犯砂利を撒き、人感で反応するセンサーライトを取りつけて……。

これで万全!!

ちょっと待ったぁ~~。でも、これだけの設備を揃えるとなると、かなり費用がかかるのでは? 何十万、場合によっては何百万円の出費もありえるでしょう。

もちろん、これらの防犯グッズを使用することは有効ですし、設置することで得られる生活や心の安寧はお金には変えられないかもしれません。しかし、その前にやれることはあるはずです。

 

抑止力。これが「防犯意識」の原点だと思うのです。

変な話ですが、泥棒の視点に立ってみると分かりやすいかもしれません。監視カメラが設置されている家と、設置されていない家。どちらが侵入しやすか? 考えるまでもなく、監視カメラのない家です。

しかし乱暴なことを言えば、そのカメラに何が記録されているのかは関係ありません。泥棒には確認のしようがないからです。

肝心なのは監視カメラで撮影しているかどうかよりも「前」の段階、つまり「カメラがある」という事実。それだけで、泥棒にとっては侵入しづらい家になるのです。

「侵入が面倒くさいかも」と泥棒に思わせること。それが防犯の第一歩となります。

 

例えば「施錠」。ちょっとコンビニに行くだけだから、と鍵をかけずに出かけたこと、ありませんか? 例え5分10分の時間だとしても、もしターゲットを物色中の犯罪者がその瞬間を見ていたら、その間が命取りになってしまいます。

 

例えば「郵便ポスト」。新聞やチラシ、DMが乱雑に溜まっていませんか? ポストに物が溢れている=長期不在、と勘繰られる可能性が高いです。ポストは小まめに整理し、旅行などで家を空ける場合は郵便や新聞の配達停止手続きを取るなど、目につく場所の整理整頓は重要です。

 

例えば「ご近所さん」。“人の目”は何よりも強力な防犯対策です。実際、泥棒が犯行を諦めた理由は「近隣住民に声をかけらた」「周囲の視線を感じた」ことがもっとも多いのだそう。一人より二人。一軒より二軒。住環境の輪が、見慣れない人物を見つける目となり、また子供たちの安全を見守る目にもなるのです。常日頃から近所付き合いを持っていれば情報共有もできますし、さらなる対策にも繋がるでしょう。

 

防犯対策と言っても大上段に構える必要はなく、つまりは日々の「心がけ」なのかもしれません。上記の行動をちょっと意識するだけでも、泥棒にとって侵入するハードルはかなり高くなるはずです。

 

 

少しだけ具体的な対策を考えてみましょう。

警察庁が発表している「住まいる防犯110番・侵入者プロファイリング~心理と行動」というサイトに興味深いデータがありました。

 

 

このグラフは、泥棒が目的の家への『侵入を諦める時間』を表わしたものです。

ちょっとでも手こずれば諦めるタイプもいれば(青ゲージ)、10分以上かかっても粘る場合(赤ゲージ)もありますが、約7割の泥棒は「5分」を目途に入るか否かを判断していることがわかると思います。たった5分、されど5分。泥棒に「侵入しづらい家」と思わせることができれば、防犯対策の初期段階はクリアです。

 

では、どんな手段を講じればいいのでしょうか?

まずは泥棒が侵入そのものを躊躇する仕掛けを設けること。監視カメラや人感センサーはその最たるアイテムですが、もっと簡単な方法も。それはいささか古典的ですが、外出時に「部屋を明るくしておく」「テレビやラジオをつけておく」というもの。人の気配を少しでも感じれば、それだけで抑止になります。

また、これまた古くから言われている手法ですが、その名の通り「番犬」を飼うのも馬鹿にはできません。侵入者を見つける→吠える→周囲に気づかせる。見られず、目立たずを気にする泥棒にとってはまさに天敵でしょう。まあ、監視カメラやセンサーを設置するのと、犬を新たに飼い始めるのを比べた場合、どちらが大変かという問題はありますが……。

 

確かに、日本は世界に比べて治安がいい国です。それ故、防犯意識というのがそれほど育ってこなかった風土があるかもしれません。しかしながら、身近で起きていないだけで、一日に数十件の侵入窃盗の事件が起きているのも事実です。

本来ならば最新セキュリティ設備を紹介すべきだったのかもしれませんが、まずは「防犯」という意識を持つことが先決だと思い、かなり初歩的な話にまとめてみました。

もちろん、今すぐ気軽にできる対策には限度があります。どれだけ効果があるのかと言われても、明確には答えられません。

しかし確実に言えるのは「何もしないよりは全然いい」ということ。意識をすれば、何かが変わります。まずはそれくらいの気楽さから始めてみませんか?

 

 

 

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