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Vol.21 単なる出入口じゃない。家の顔は玄関で決まる?!

尋常ならざる暑さが続いておりますが、みなさま夏バテしていませんか? 水分も睡眠もたっぷりとって、健康管理に留意して夏を楽しみましょう。ライターのタラです。

突然ですが、アニメ「ドラえもん」。説明不要の人気作品ですが、あまた登場するひみつ道具の中でもっとも人気のある道具は「どこでもドア」だそう。音声や思念などで入力した上で扉を開くと、その先が目的地なるというトンデモ道具です。確かに、家の出入口がどこでもドアだったら……という妄想は、誰しもがしたことがあるのでは?

ということで、多少強引ではありますが、今回はドアと玄関に関するあれこれ。どうぞ、入口はこちらです。


以前ちらっと書いたかと思いますが、普段は配達業をしています。ネットショッピングの隆盛で、そこそこに忙しい日々。みなさん、色々とネットで買い物するなあと実感しているわけです。

僕が受け持つ配達エリアというのが、市内でもかなり田舎の方。日中は農作業をしている家も多く、結構な確率で不在。すると先輩が言いました。

「〇〇さんの家、玄関開いているから荷物置いてきていいよ」

そんな家が、何件もあるのです。実際、玄関に鍵をかけていないお宅も多く、中には玄関口のドア自体を開けっ放しにしている家もあります。

置いて構わないと言われても、やはり躊躇はあります。わざと大きい声で呼びかけるのですが応答はなし。恐るおそる荷物を置いてくるのです。時間を気にせず、確実に荷は片付くのでありがたいですが……。

隣近所がみんな昔馴染みで、だいたいが知り合いとは言え、ここは静岡市内で、今は令和。いささか不用心が過ぎるなぁ、と他人事ながら思っていたのです。

 

 

しかし、落とし穴は身近なところに。

これも何度かご紹介したことですが、我が家はおもちゃ屋で、某駅前の商店街の中にあります。一階が店舗スペース、二階三階が居住スペースになっており、店を通り抜けて階上へ行くという造り。

一般住宅における「玄関スペース」が店の奥にあり、家の出入口にあるのはドアではなくシャッター。今は開店休業中みたいなものなので、出入りするたびにシャッターを開け閉めしなければならず、少々面倒。しかも、自動シャッターのため開閉に時間がかかるのです。

朝、急いでいる時など時間を惜しんで、開いている途上で無理やり腰をかがめて潜り抜けたりすることもしばしば。せめてドア付きのシャッターにすれば良かったのに、と思わずにはいられません。

そして、先日、その自動シャッターが壊れました。開閉するたびに「ドガン! ドガン!」と金属がぶつかり合う轟音が……。しかも途中で止まる。かと思うと、急に動き出して、再び轟音。通行人が思わず振り返るほどでした。

逆に閉める際も完全にはシャッターが下り切らず、薄っすら隙間ができてしまいました。

我が家の出入口はそのシャッターのみです。完全に壊れて、もし動かなくなったら……結果、取った苦肉の策が、最悪通り抜けられる状態のままにしておく、というものでした。

80センチほど開けっ放した状態で、出入りはこの隙間をかがんで通り抜けていました。何でしょう。我が家なのに、入るたびに忍び込んでいるような、妙な罪悪感を覚えました。

さらに驚くべきは、24時間、家に誰もいない時もこの状態だったこと。

シャッターの意義とは一体? 防犯意識の欠片もありません。

先述した配達先の家々は、言っても市内の山の方。正直、人通りは多くありません。が、我が家は一応駅前の商店街。いくら寂れているとはいえ、それなりに人は歩いています。

今改めて写真を見て当時を思い出すと、家族揃って何を考えていたのかと、ゾッとします。

 

 

ここで少し歴史の勉強です。

家があればドアがある。当たり前のことですが、ではいつごろから家にドアが付くようになったのでしょうか?

現在、ウクライナのメジリチ遺跡で発見された住居が世界最古と言われており、およそ15000年前のもの。マンモスの骨を数百とドーム状に組み上げて造られているそうですが、そこにはドアはありません。入口部分がぽっかりとあいており、形はかまくらに近いかも。主に、寒さや強風から身を守る目的だったようです。

その後の詳細は不明ですが、それから時が進み紀元前2000年~紀元前4000年頃の古代エジプト文明ではすでにドアの存在が確認されています。

さらに時間を進め、紀元前1000年ころを過ぎると、やっと日本でもドアの歴史が始まります。ちょうど弥生時代のころ。我らが静岡にある伊豆山木遺跡にて木製のドアらしきものが発見されています。まさか静岡が日本におけるドア発祥の地? 興味のある方は、資料館などもあるようなので、是非足を運んでみては?

 

※復元した弥生時代の住居。こちらは佐賀県の吉野ケ里遺跡のもの。

 

さて、子供ころに海外の映画やドラマを見て「外国人は家でも靴を脱がないんだ」、と思ったことはありませんか? 靴のままベッドにゴロンとなったりして、汚いなぁと感想を抱いたのをうっすら覚えています。

日本と諸外国、家屋の違いは色々ありますが、もしかしたらコレが一番の違いかもしれません。つまりこれはどういうことか。靴を脱ぐ必要がない。すなわち、そのスペースが不必要。そう、欧米の家には「玄関スペース」がないのです。ドアを開けるといきなりリビングだったりします。そのままソファに座り、家中を歩き回り、ベッドにも横になるのです。

そして、玄関の有無はそのままドアの開き方の違いにもなります。日本の家屋のほとんどのドアが外開き。埃や雨の侵入を防ぐためだったり、災害時の経路を確保しやすいなど理由は諸説ありますが、一番の理由は玄関があるからです。玄関には脱いだ靴。もし内開きだと、ドアの開閉のたびに靴がひっかり邪魔になります。だから、日本でも靴を脱がないホテルでは、外開きのドアが多いとのこと。

一方、諸外国では玄関スペースを気にしなくていいので、基本内開きです。玄関がないのならば、内でも外でも構わないような気がしますが、実は防犯を考える上では内開きの方がいいとのこと。

ちょっと想像してみてください。不審者が家のドアを開けようとしています。外開きドアの場合、開けようとする力に対して、ドアを引っ張ることになります。

しかし内開きの場合、押してくる力に対して体重をかけて押し返したり、物を置いて重しにすることもできます。なかなかそんなシーンには遭遇しませんが……。

ちなみに、引き戸がほとんどだった昔の日本においても、皇居やお城などの重要施設には「内開きのドア」が導入、使われていたそうです。

 

 

家の出入口は確かに防犯の最初の砦です。ドアのロックだけでなく、最近では防犯カメラや人感センサーなどを設置しているお宅も多いでしょう。「防犯対策がある」と不審者に思わせるだけでも、その効果は大きいといいます。

何かと物騒な事件が多い昨今。鍵なんかしない。ドアを開けっ放しの、古き良きご近所との交流を懐かしみつつ、直ったシャッターにホッと胸を撫でおろしているのでした。

 

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