Vol.64 飢えより渇きは耐えられない? 水と暮らしの大事な話。
突然肩が痛くなり、中々治らないので医者に。レントゲンを撮り、触診し、出た診断は「四十肩」。他人事だと思っていましたが、いざ自分がなってみると、かなり痛い。服の着脱が特に危険。老いをヒシヒシと感じているライターのタラです。
さて今回は、私たちの生命活動に欠かせない「水」のお話。切り口はいくらでもありますし、語りだせばこのコラムのスペースでは足りない、壮大なテーマです。ご安心を。当コラムのモットーは「箸休め的に楽しめる読み物」。小難しい話は抜きにして、水にまつわるあれこれを語ってみたいと思います。それでは、水分補給しながらお楽しみください。
2022年9月。台風15号が静岡に上陸、同一箇所に長時間雨雲が停滞する「線状降水帯」が発生し、停電や浸水、土砂災害など甚大な被害をもたらしました。
中でも私たちが住む清水区は、日常生活を脅かす直接的な影響を最も受けたかもしれません。
全国でも有数の美味しい「水道水」として有名な我が清水。その味は、販売されているペットボトルの水と清水の水道水を目隠しで飲み比べて、清水の方が美味しい評価を受けたことがあるほど。そして、そのその水源の大半を担うのは興津川です。
しかし、台風の影響で興津川に大量の土砂や木が流れ込み、取水口を塞いでしまったのです。その結果起こったのが「断水」。
生活を支える三つのインフラ、「ガス」「電気」「水道」の中で、その利用料金を滞納した場合、最後まで止まらないのは水道と言われています。それはガス・電気に比べて、水が生活に欠かせないためであり、命にかかわるからです。
水道管工事などで、数時間水道が止まるだけでも結構な不便を感じるものですが、災害による断水はその比ではありませんでした。
トイレが流せない。お風呂に入れない。洗濯ができない。洗い物ができない。
近所のスーパーやコンビニからはペットボトルの水が消え、稼働しているコインランドリーは大混雑しました。9月の残暑の残る時期だったこともあり、お風呂を使えないのも相当にストレスでした。
さらに問題だったのは、この断水がいつまで続くか分からなかったことでしょうか。災害による断水なので仕方のないことですが、期限が見えない我慢を強いられるのは苦痛でしたし、日に日に不安が増していったのを覚えています。
清水区では約63,000戸で断水。結果的に全ての断水が解消したのは発生から12日後です。蛇口やハンドルを捻れば簡単に水が出ることの大切さ・ありがたさを感じた12日間となりました。

写真:静岡県河川協会
ちなみに、日本では安全に飲むことができる水道水。世界に行ったら決して当たり前のことではありません。
よく、海外旅行先で「現地の水を飲んで腹痛を起こした」などのエピソードを見聞きしますが、それもそのはず。水道水をそのまま飲めるのは世界を見渡しても10か国程度だと言われています。もちろんアジア圏では日本だけ。ありがたいことです。
そういえば私も海外放浪した際は、よく1ガロン(約3.8リットル)の水を買っていたなぁ。

さて、「水の惑星」とも呼ばれる、我らが地球。その所以は、地球表面の約70%を覆い、総量が約14億立方キロメートルにも及ぶ膨大な水を湛えているからに他なりません。数字が大きすぎてピンときませんが、日本一大きな湖である琵琶湖をスプーンと見立てた場合、なんと約5,090万杯分に相当するそう。これでも全然ピンきませんが、とにかく尋常じゃない量だということ。
そんなにあるなら水に困ることはないのでは? と思えますが、そうは問屋が卸しません。
この膨大な水量の内、約97%は海、つまり海水です。誰もが一度は間違えて口にしたことがあると思いますが、とても飲めません。塩分が入っているので炊事洗濯など生活用水としての活用も不可。海がすべて飲める水ならば、世界の水不足は一瞬で解消したはずです。
そして残る3%前後が淡水、つまり真水なわけですが、これまた厄介なことにその内70%くらいは南極や北極付近の氷や氷河であり、実用的ではありません。
結局、地下水や河川、湖沼などの水として存在する淡水の量は地球全体の水の約0.8%程度、飲み水に限ればもっと少ない量でしかないのです。
とある機関の研究によると、世界中で約22億が安全な飲み水を使用できず、内1億5000万弱の人は湖や河川の未処理の水を飲んでいるそうです。
また約42億人が、安全面・衛生面が管理されたトイレを使用しておらず、さらにその1/7以上の人は、家や近所に利用できるトイレすらなく、道ばたや草むらなど、屋外で用を足しているとも言われています。
いつでもどこでも水が使えることは、行き届いたサービスと卓越した技術があってこそです。使うたびにそのありがたみを感じるのは難しいですが、決して当たり前ではないということを、心のどこかに持っておくのは大事かもしれませんね。

では、話を私たち自身の身体に向けてみましょう。
日々生活している中で、汗、涙、尿など、人は様々な水分を体外に排出します。それは飲み物、食べ物で吸収したものですが、そもそも人の身体はそのほとんどが水分でできています。パッと自分の身体を見ても水らしきものを確認できるわけではありませんが、一般成人で体重の約60%は水分だと言われています。まあ大半は細胞内に含まれる水分なので中々実感しづらいかもしれませんが……。ちなみに私の体重は約70㎏なので42㎏は水ということになります。
身体の大部分を占める水。その水が不足するということは、それだけ身体が機能しづらくなることと同義です。
人は、一切の食べ物を口にしなくても、水と睡眠さえとっていればひと月程度は生きられると言われています。しかし、水を一滴も飲まないでは二日ともたずに様々な悪影響が発症するそう。
体内の水分を増やさず、減る一方となれば当然。たった1%の損失でのどの渇き、2%で眩暈・吐き気・食欲減退、10%以上となると筋痙攣・失神などが起こり、20%を越えると機能停止。すなわち死がやってきます。
私たちが子供の頃は、炎天下の部活でも「水を飲まない」という謎の文化がありましたが、今考えると狂気の沙汰ですね。笑いごとではなく危険です。キチンと水分は摂りましょう。
と、その一方で、ちょっと不思議(?)な話。私の父は無駄に高学歴で、ちょくちょく知識をひけらかしてくるのですが、その中の一つに「一気に一升瓶の酒は飲めても、水は飲めない」というものがあります。単なる酔っ払いの戯言……とも言い切れないのが小憎たらしい。
一升瓶(1.8リットル)の部分は何の情報なのかは不明ですが、確かに短時間で過剰な真水の接種(1リットル以上)、あるいは一日に6リットル以上の水を飲料として摂ると「水中毒」の症状を引き起こす可能性があります。たかが水と侮るなかれ。
水中毒になると、吐き気・嘔吐・頭痛・眩暈・意識障害を発症し、重篤化すると痙攣や意識不明、最悪の場合命の危険も。
毎日水を飲むことは必要です。しかし一気にがぶ飲みするのは禁物。目安としては体重×30~40ミリリットル程度。私の場合だと体重は約70㎏なので2~2.8リットル程度を、小まめに飲む感じ。特に、起床時、運動時、入浴時、就寝前などは体内の水分が失われやすいため、意識して水分を摂るようにするとベターです。
ところで、水の摂り過ぎは危険だというのはわかりましたが、考えてみればお酒もほとんどは水分。何故、お酒なら飲めるのでしょうか? 調べた感じでは水には無い何かの成分が体内の物質と反応、吸収を促して云々……という記事は見つけたのですが、それも確証はなく、あくまで「そうなのではないか」程度に締めくくられていました。
「お酒なら飲める」くだりは、もしかしたらお酒好きの人が飲む口実に言っただけなのかも?

最後に少しだけ科学的なお話です。
私たちもよく使う氷。元は水で、0℃以下になると凍結し氷になります。普通に考えれば、0℃に近い水を製氷した方が早く凍りそうですが、実はお湯の方が早く氷ができる場合があることをご存じですか? 1963年、タンザニアに住む少年が偶然発見した現象で、その少年の名から取って「ムペンバ効果」と言います。
直感的に受け入れがたいこの現象は、長年議論の的に。多くの科学者が研究に明け暮れました。その過程で、確かに高温の水の方が低温の水よりも早く凍る場合があることは確認されたのですが……如何せん再現性が低かったようで。かなり特殊で限定的な条件が求められるため、家庭で気軽にというわけにはまだまだ行かないようです。嗚呼、残念。
もう一つ氷の話。早さではなく綺麗で溶けにくい氷の作り方を伝授しましょう。これは簡単。一度水を沸騰させ、冷やした水を使うだけ。沸騰することで水中のカルキやミネラルが除去され、水の白濁を防ぐかららしいです。しかも溶けにくいなんて……。やってみる価値はあり、です。

長々書いた割には、少しばかりとりとめのない話になってしまいました。絞ると言っても、やはり水はテーマとして壮大です。いずれまた別の切り口で、水に挑みたいものです。
熱中して書いたので少々のどが渇きました。コップ一杯の水を飲んで、ボチボチ床につきます。それではまた次回。