ブログ

Vol.33 映画の中の「部屋」。非日常の扉を開けよう。

部屋の壁掛け時計が壊れました。十年以上使ったお気に入りでしたが諦めて、新しい時計を買いました。しかし壁の留め金の掛け方が甘かったせいか、突然落下。動作はしますが、盤面に亀裂が入ってしまいました。買ったばかりなのに……かなり凹んでいるライターのタラです。

さて、当コラムで定番となりつつある「紹介シリーズ」。いつもは小説ですが、今回は映画。“ルーム”がタイトルに入っている作品をご紹介!

昨今はサブスクも充実しているし、もしかしたら小説よりも取っつきやすいかも。

映画の世界では、どんな不可思議な部屋が描かれているのでしょうか? それではごゆるりとお楽しみください。


僕と同世代(四十代前後)の人に「タイトルに“ルーム”がついている映画と言えば?」と聞いたら、恐らく九割以上が「パニック・ルーム」を挙げるのではないでしょうか。アカデミー賞女優のジョディ・フォスター主演のサスペンス映画。2002年公開なので、もう21年前。僕自身二十代前半で、映画館にも観に行ったような記憶があります。

この映画で鍵になる“ルーム”は緊急避難用のスペース。いわばシェルターみたいな部屋です。

老富豪が残した豪邸に引っ越すことになった母子。あらゆるものが豪奢なまさに豪邸でしたが、ひと際異彩を放つのが、パニック・ルームと呼ばれるその部屋。室内には家中を監視しているカメラ映像を映すモニターが設置されている他、大量にストックされた非常食や防災グッズ、扉もセンサー式という徹底ぶり。外からは開けられない密閉空間です。

しかし過剰とも言えるセキュリティを施されたパニック・ルームにはとある秘密が。

そんなことを知る由もない母子は普通に暮らし始めます。がその夜、秘密を知る強盗が屋敷へと侵入。それに気が付いた母子はパニック・ルームへと逃げ込み、強盗たちと対峙するのですが……。

とまあネタバレを避けながら説明するなば、こんなストーリーでしょうか。

部屋に立てこもる主人公。そこから何とか出させたい強盗たち。一つの部屋の内と外の対比をアップテンポに描いています。

主人公が閉所恐怖症、娘が糖尿病で定期的にインスリン注射をしなければならない、という縛りが、またスリリング感を増幅させています。

 

 

部屋から「出ない」ことで強盗たちと戦ったパニック・ルームに対して、2019年公開のホラー映画「エスケープ・ルーム」は逆。「出る」ことが目的です。いわゆるデスゲーム系作品で、日本でも人気の高いSAWシリーズやCUBEシリーズの系譜と言えばわかりやすいかもしれません。

賞金1万ドルに釣られて、謎の「体験型脱出ゲーム」に参加することになった六人の男女。単なる脱出ゲームかと楽観視していたが、主催者らしき人物表れず不穏な空気が流れる。参加者の一人がタバコを吸うために部屋を出ようとするとドアノブが外れ、閉じ込められたことに気づく。そして突然、ゲームが開始されたのだった。

それぞれの個性や知識を活かし、何とか脱出の方法を探る六人。外れたドアノブの穴にダイヤルを発見し、入力すべき数字を探す。とあるヒントを見つけ、入力するもそれは罠だった。天井や柱がヒーターのようになり、部屋が高温度の灼熱地獄と化し……。

もちろん部屋は一つではなく。脱出したらまた次の部屋、そしてまた次の部屋へと、死をかけたゲームは続きます。最後まで生き残るのは誰?

一見すると無関係、年齢も職業も違う六人。しかしとある共通点があり、その謎も脱出ゲームが進むにつれて明らかになっていくので、ミステリー要素もあって楽しめます。未視聴ですが、続編もあるようなので、意外な人気シリーズなのかも?

 

もちろん、そんな物騒な部屋ばかりではありません。日本映画「クワイエットルームにようこそ」で描かれる部屋は、精神病院の閉鎖病棟の一室。

フリーライターの明日香は、目を覚ますと見ず知らずの真っ白い部屋にいた。記憶が混濁し、自分の身に何が起きたのかわからない。医師から説明を受けて、衝動的に睡眠薬を過剰摂取し、意識を失い運ばれてきたことを知らされる。ひと癖もふた癖もある入院患者や看護婦たちに最初は戸惑いながらも、少しずつ閉鎖病棟での暮らしに馴染んでいく。

家族の死、元夫の自殺、仕事のスランプ……明日香は、自分を苦しめるストレス要因をちゃんと見つめ、人生そのものを取り戻すことができるのか?

言うなれば、この映画も部屋から「出る」ための物語ですが、根底にあるのは「再生」です。閉鎖病棟が舞台で、患者たちの抱える事情も決して軽くない。しかし、それでいてなお重苦しくなく、それぞれの変化や成長がコミカルに描かれています。ヒューマンドラマであって、なおかつコメディ。

あまり邦画は観ないという方も「これだけは観るべき」と絶賛する傑作映画です。僕も大好きな女優である蒼井優さんがかなりのハマり役!

 

 

つづいて邦画をもう一本。ちょっと変わり種なのが「ルームロンダリング」。ロンダリングとは「洗濯する、浄化する」みたいな意味。ニュースなどではよく「マネーロンダリング」なんて言葉も耳にします(あまりいい意味ではないですが……)。この映画で洗濯するのはお金ではなく部屋。もちろん、ハウスクリーニングの話ではありません。扱うのはいわゆる事故物件。

事故物件を貸し出す場合、不動産会社には説明義務があります。しかしそこには何年前だとか何人目という基準はなく(映画の中では?)。そこでとりあえず事故物件に人を住まわせて事故履歴を帳消しにし、クリーンな空き部屋にするのがルームロンダリング。

その仕事を任されたのが、天涯孤独、人付き合いが苦手で引っ込み思案な女性、八雲御子。誰とも会わず、ただ一定期間部屋で暮らすだけの仕事は彼女にぴったりだったが、なんと部屋にはこの世に未練を残す幽霊たちが住みついていた。

……という完全にファンタジーなお話です。

主人公の御子は霊が見え、しゃべることもできる特異体質。その力を持って、霊たちと交流し、この世への未練を断ち切っていきます。

自ら命を絶ってしまったパンク・ロッカー、ストーカーに刺殺されてしまったOL、蟹の扮装をしている少年……幽霊には幽霊なりの悩みがある。果たして御子は彼らの悩みを解決し、無事に成仏させることができるのか。

事故物件を扱い、幽霊たちも出てきますがホラー感はほぼなし。どちらかと言えばヒューマンドラマ&コメディ色が強めでしょうか。

観れば、事故物件ももう怖くない??

 

 

今回は映画で描かれた四つのさまざまな「部屋」をご紹介してみました。どれ一つとして「住んでみたい」と思える部屋、ありませんよね。でもそれでいい。映画という創作物、こちらではないあちらだからこそ、いち視聴者として楽しめるわけで。

もちろん、まだまだ紹介しきれていないし、さまざまな切り口で映画も取り上げていきたいと思います。

一個でも気になり、観てみようと思っていただけたら幸いです。

いやぁ、映画って本当にいいものですね。

 

 

 

前へ戻る