ブログ

Vol.35 めくるめく家紋の世界へ、カモン・レッツ・ゴー!

先日、飲み出て、泥酔。スマホを無くしました。途中で無いことに気づきましたが、深夜だし、酔っているし、周りに誰もいない。鳴らしてもらうこともできず、そのまま帰りました。翌朝、やっぱりスマホはありません。夢ではありませんでした。焦って携帯ショップに行ったら、スマホお探しサービスに何故か加入していたおかげで、何とか見つけることができました。年々、お酒が弱くなっている、ライターのタラです。

今回は、そんな近況報告にはまったく関係ない、「家紋」にフォーカスしてみました。みなさん、自分の家の家紋、知っていますか?


「この紋所が目に入らぬか~」

の決め台詞でお馴染みのドラマ、水戸黄門。徳川家康の孫であり、水戸藩主であった徳川光圀が全国を漫遊しながら各地でトラブルを解決するという、時代劇の人気シリーズです。

相手が何人いようが、どんな大悪党だろうが、このセリフとともに掲げられる印籠を見るや否や顔色をなくし、「ははぁ~」と平伏するわけですが、背景も事情も歴史も知らない子供心には「印籠ってスゴイな」と思ったものです。印籠がなにをする道具かも知りませんし。

しかし、セリフを見ればわかりますが、スゴイのは印籠そのものではなく、そこに記されている紋所=家紋。徳川家の葵の紋です。

現代の感覚では分かりづらいかもしれませんが、家紋とは家そのものを表わすシンボルのようなもの。特に葵の紋は徳川家が独占、一切の使用を禁じた権威の象徴でした。

そもそも、日本でもっとも権威のある家紋といえば、朝廷の「菊紋」と「桐紋」でした。朝廷よりこの紋を賜ることは大変な名誉なわけです。しかし、将軍となった家康はこれを断ります。そうまでして「葵の紋」を使い続けることで逆に葵の紋を神格化していき、ついには菊紋や桐紋を凌ぐ最強の家紋にまでなったのでした。

つまり、葵の紋に歯向かうということは、将軍家に刃を向けるのと同義だったわけです。

とある浪人が葵の紋を縫いつけた衣服を着ていただけで死罪になったという文献も残っているほど。それだけ葵の紋の威光は凄まじかったということ。そんな物を見せられたら、地方の小悪党ごときは諦めるしかありませんね。

 

 

さて、当サイトでも何度か紹介しましたが、僕の部屋には仏壇があります。毎日読経するわけでもなく、線香もたまにしかあげない駄目な子孫なわけですが、その仏壇、結構しっかりした造りです。大きさもさることながら、中の造りも凝っていて、欄間と呼ばれる部位は透かし彫りみたいになっており、恐らくそこそこ値は張るのでは? そんな仏壇に、我が家の家紋が埋め込まれています。

丸に歯が三枚の模様で構成されており、パッと見はそれこそ徳川の葵の紋に似ているのですが、当然違います。調べてみると、恐らく「丸に片喰」という家紋。

片喰(カタバミ)という多年草を図案化したもの。植物をモチーフにした家紋はかなりの数あり、この紋も植物紋に分類されています。

遡れば、四国の長曾我部氏や徳川四天王の一人に数えられる酒井左衛門尉家の家紋として有名らしいですが、我が家との繋がりはわかりません。どうやら田のつく性の家に多く使われており、西日本に多く分布しているそう。

そもそも我が家は、祖父母が共に夫婦養子という形で、僕が会ったことのない曾祖父母の子供になったいささかイレギュラーな家系。直系はもはや辿れないでしょう。

しかし曾祖父の遺影を見ると、「丸に片喰」の家紋の入った着物を着ているのが確認できます。1949年に亡くなっており、その曾祖父が使っていたということは、まあ我が家では最低でも80年近くはこの家紋を使っていることになるわけです。とは言え、何故にこの家紋になったのかは、もはや知るすべもありませんが……。

 

我が家の家紋「丸に片喰」の紋。

 

では、何のために家紋があるのでしょうか?

その始まりは平安時代後期、公家にあると言われています。自分たちの持ち物、特に牛車 (牛が牽引した車)にオリジナルの文様を掲げ、ひと目で誰のものかわかるようにしたのが最初だったとか。当然、家格には差があり、例えば自分よりも地位の高い人の牛車とすれ違ったら道を譲るか、場合によってはさらに平伏をしなければならない場合も。家紋はその目印となったわけです。

やがて鎌倉~戦国時代がやってきて、武士の間で家紋が流行します。主な用途は、戦場において敵味方の区別をつけるため。目立つように陣地に掲げる陣幕や旗、鎧兜に家紋が掲げられます。凝った意匠が多かった公家に対して、武士の家紋はシンプルなものが主流。大勢が入り乱れる戦場にて、ひと目で味方だとわかるシンプルなものが好まれたそうです。

そして江戸時代になると庶民の間で家紋が使われるようになり、一気に家紋の最盛期を迎えます。特に商人や職人の間では、今流に言えば「ブランド価値」を示すような役割を持っており、大変重宝されたと言われています。

 

ドラマやゲームで人気の高い真田家の家紋はシンプルな「六文銭」

 

現代では、家紋に関して厳密にはルールはありません。誰でも持つことはできますし、何なら新しい家紋を作成することもできます。ただし「使ってはいけない、使わない方が無難」という家紋もあります。最後にそれらを少々紹介しましょう。

まず使えない家紋は、すでに商標登録されているもの。主に企業のロゴマークにそのまま使用されているものが多く、無断で使うと訴えられる可能性もあるのでご注意を!

 

そして使わない方が無難な家紋は、皇室の紋章である「菊花紋」、日本政府が使っている「桐紋」、先述した徳川家の「葵紋」、そして武将たちの有名な各種家紋です。どれを使っても罰則などはありませんが、あまりに有名なため、余計な詮索や無用なトラブルの原因になる場合も。よほどの覚悟がない限り、使用は避けるべきでしょう。

 

複数の友人に「自分の家紋って知っている?」と尋ねたところ、ほとんどが知りませんでした。正直、家紋があろうがなかろうが生活には困りません。使う場面もないですし。だからこそ、今生きている自分たちが後世に受け継いでいかなければ、確実に消え去り、忘れ去られてしまう家の大事な文化です。物自体はなくてもいい。写真や、絵でもいい。何かしらの形で残しておいても損はありません。

自分の家紋を調べてみたら「由緒正しい紋だった」や「あの武将と同じだった」……なんてちょっと嬉しい家の歴史に出会えるかも……?

 

 

 

前へ戻る