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Vol.63 上にあるのに根? 知られざる屋根の小噺。

片頭痛持ちで、腰痛気味、最近は肩にも違和感が出てきた身体ボロボロの自分ですが、唯一ラッキーなことは花粉症がないことです。友人も半数以上は花粉症に悩んでいますし、まさに特効薬が誕生すればノーベル賞モノでしょう。ライターのタラです。

このコラム連載もありがたいことに60回を越え、当初の目標だった100回も非現実的数字じゃないかなぁと思ったり、やはりまだまだ遠いと凹んだり。一番大変なのは何よりも「ネタ探し」。暮らしや家に関する内容を土台にしている故、全く関係ない話を選ぶわけにはいかず。ついついニッチな方向に行かざるを得ないわけで。ということで、今回も家を分解。「屋根」に絞ったお話です。ではでは、どうぞ気楽にお楽しみください。


コート・ダジュールという場所をご存じでしょうか。地中海に属するリビエラ海岸のフランス側を指し、紺碧海岸とも呼ばれる風光明媚な保養地かつ高級住宅街。映画祭で有名なカンヌや、世界的に有名な観光地であるニースなどがある一大リゾート地です。

 

この地方の建造物は黄色やオレンジといった鮮やかなビタミンカラーが使われているのが特徴。可愛らしさの中に温もりを感じさせる街並みを演出しています。一度は行ってたい場所ですが、当然遠い&超高級リゾート地。フラッと遊びに行けるような場所ではありません。

ですが安心してください。我らが静岡県にもコート・ダジュールがあるのです。それが西伊豆の松崎町の岩地地区。白い砂浜と紺碧の海が織りなす美しい景観を持つエリアで、ずばり「東洋のコート・ダジュール」と呼ばれています。

もともとは町おこしとして「東洋のコート・ダジュール」を掲げたそうですが、ただ美しい海岸を持っている、というだけではありません。よりコート・ダジュールに近づくために海岸沿いの建物にも手を加えたのです。

先述した通り、コート・ダジュールの建物の特徴であるカラフルなカラー。それを取り入れて、屋根を黄色やオレンジ、緑にペイントしたのです。

こんな感じ↓

 

提供「松崎町」

 

実は昔、テレビ局に勤めているとき、この岩地に取材に行ったことがあります。確かにカラフルな屋根が印象的でした。それだけで異国感がグッと増すというか、雰囲気が出るというか。まあ本物のコート・ダジュールを知らないので比較はできませんが、不思議な非日常感を覚えた記憶があります。

夏は海水浴場として多くの人で賑わい、水着のまま入浴できる舟型無料露天風呂「ダジュール岩地」も人気だそうです。

静岡市内からだと二時間くらいで行けるのではないでしょうか。詳しくは松崎町観光協会(https://izumatsuzakinet.com/)のホームページをチェックしてみてください。

 

ちなみに本場コート・ダジュールの景観はこんな感じ。確かに雰囲気は似ている??

 

 

さて、タイトルで触れている話。

いきなりですが、屋根はどこにありますか……と疑問形で書きましたが、問うまでもなく家の上です。しかし、屋根という字を見てください。「根」という字が使われています。根は普通、つけ根や根っこという風に『物の下側』を示す言葉。草木の根にしても、地中にあり養分や水分を吸収するところです。つまり「屋根」という言葉は、家の上にあるものに対して、逆の意味の文字をあてていることになります。このチグハグ感は一体?

その鍵は「屋」の字の方にありました。

屋の字を辞書で引いてみると、まずは「人の住む建物」「住まい」「家」という意味が出てきます。家屋や社屋などはまさに意味のその意味通りの言葉です。

さて、肝はここから。屋という字、実は一文字でも「やね」という意味を持っているのです。例えば「屋上」という言葉。調べると「建物の屋根の上のスペース」とあります。屋(やね)の上で屋上というわけです。

つまり「屋」一文字で、屋根を含めた家全体を表現しているわけです。では「根」はどこから来たのでしょうか? その謎を解くには遥か昔、縄文時代の竪穴式住居まで遡ることになります。

 

 

一般的に竪穴式住居とは「地面を掘り下げて床とし、その中に掘立柱を建てて梁や桁を組み、土や植物で屋根を葺いた建物」とあります。上図の通り、いわゆる屋根が外壁の役目も果たしており、その区別がなく、軒先が地面に接触している形状がスタンダードでした。屋(住まいであり屋根)が、地面にしっかりと”根”付いている状態を表して「屋根」と呼んでいたそう。今の住宅環境からは想像できないルーツです。

やがて生活様式の変化や技術の進歩により、住宅の構造も変化してきます。柱や壁によって屋根は地面から離れ、建物の上部に。屋根が示すのは家ではなく、いわゆる現代人が認識している雨や日差しを防ぐ部位へとなりました。

つまり、構造とその認識は変わりましたが、言葉だけが残ったということなのです。説明が少々入り組んでしまい分かりづらいですが……

1 屋は「やね」の意味もある

2 「根」は現代でいう所の“屋根”が外壁等と一体化していた竪穴式住居の構造にルーツがある。屋根の軒先が地面にしっかりと根付いた構造だった

3 屋がしっかり根付いている状態を指して「屋根」と呼んだ

4 時代が流れ、屋根部分が地面から離れた構造になっても、屋根という言葉だけは残った

という感じでしょうか。これでも分かりづらい……かな?

 

 

屋根という言葉の謎も一段落(?)したところで、現在進行形の屋根の世界を見てみましょう。軒先が地面に接していた竪穴式住居から幾星霜。建物の上部へとその位置を変えた屋根は、さまざまなバリエーションへと進化していきました。

「家の絵を描いてください」

と言われて、多くの人が描くシンプルな家はこんな感じではないでしょうか?

 

 

これはもっともポピュラーな屋根の形で「三角屋根(切妻屋根)」。施工もしやすく、もっとも普及している形なので、多くの人の「屋根」のイメージになっているのでしょう。

では、屋根の形は何種類くらいあると思いますか?

ベーシックなもので15種以上、細かい違いや組み合わせも含めれば20種以上にものぼると言われています。

例えばこんな感じです。

 

 

「屋根ないじゃん」と突っ込まれそうですが、これもれっきとした屋根。これは「陸屋根」という形状。写真はいささか殺風景ですが、このスペースをバルコニーとして使用するなど、近年は需要も増えているそう。ちなみに我が家もこの陸屋根です。

 

 

一般住宅ではあまり見かけませんが、こんな形もあります。これは方形屋根と呼ばれる形で、写真は真上から見ると六角形なので六柱屋根と呼ばれています。これが八角形になれば八柱屋根。ということは、正多角形ならば十二角形でも十八角形でも屋根にできるということ? 少し調べてみましたが、そんな多角形の屋根は見つかりませんでした。でも世界中のどこかにはあるかも?

 

 

先述の通り、我が家の屋根は陸屋根で、現在は何もありませんが、やろうと思えば洒落たバルコニー風に使うこともできるのです。その気になればBBQだって。考えたことはあります。しかし、商店街に位置している立地上、隣近所が近く、目の前はアーケードの天辺。謎のケーブルや電線も多数あり、火を使うには躊躇いが……。ただ屋上で飲み食いするのはできますが、そもそも屋上に行くには親の寝室を通らねばならず。流石にそれは気が引けるなぁ。

結局、そこそこ広いスペースも宝の持ち腐れ状態なのでした。

 

 

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