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今の家づくりはいつまで通用する?

【性能基準は日々成長していく・・等級5,6,7】

家づくりにおいてとっても大切な健康的で快適な暮らしをおくるための住まいの室温などの環境性能の中の断熱や日射のコントロールを示した省エネルギー性について先日こんなニュースが国交省から発表されました。

 

 

「新築住宅における省エネルギー性能の評価でもある断熱性能の評価に新たに上位等級が加わるという検討を国土交通省、経済産業省、環境省の住宅・建築物の省エネ性に関する基準整備を進めるための合同会議において進めるというニュースです。住宅性能表示制度において、ZEH水準の外皮性能を等級5とする案は既に検討されているが、新たにZEH水準を上回る性能を、等級6、7として設定することも審議していく」ということです。

さすが国、省庁の関係するニュースですね。難しくて私が建築業に携わっていなくて家づくりを考えている立場としたらちょっと感覚的につかめないかも・・・。

ということで少し現行のいろんな基準を参考に考えてみようと思います。

 

【今ある基準とは・・・】

 

 

現行での国の定めている基準は平成28年度基準というもので住宅性能評価の評価方法では等級4というのがMaxの基準になり

(ZHE基準というものもあり「外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギー等(太陽光発電など)により年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの住宅」というものもありこちらは等級4より少し高い性能となります。)

日本全体をいくつかの地域に区分して性能値を表していますがCAC建築工房のある静岡市などの7地域という区分で考えて見ると 外皮平均熱還流率 UA値=0.87 W / (㎡・K) 冷房期の平均日射熱取得率 ηAC値=2.7 となっています。 専門用語の数字が並んでどんな暮らし、どんな住まい環境か・・・が、よくわからないですね。

※静岡県内でも6地域という区分の地域もありますので詳細は実務者に確認していただきましょう。

 

そこで、一般社団法人HEAT20という研究機関の指標を見てみると参考になることが掲載されていますのでご紹介。指針によるとこの平成28年基準は静岡の地域では「冬期間の最低の体感温度がおおむね8℃を下回らない」「冬期間、住宅内の体感温度*1が15℃未満となる割合が30%程度」という性能になると暖房の方式を仮に想定して示しています。

普段から慣れ親しんでいる室温(気温)に置き換わった瞬間になじみが出てきて、なんとなくでも想像できてくるかと思います。

と、こちらが国(国交省)の定めている最高等級になり補助金などの関係でよく耳にする『長期優良住宅』といわれるのがこの基準になります。

 

さて、この基準で最近よく聞く高気密高断熱、エアコン一台で・・・、夏も冬も快適・・という環境になるのか・・・? と、いうところですがそこはちょっと難しいかなと思います。

そして、「冬期間の最低の体感温度がおおむね8℃を下回らない」・・・?

確かに一昔前の家のように凍えるような寒さではないですし、大量のエネルギー(電気やガス)を使って暖房すれば快適な室温になると思いますが、省エネで快適な環境とまではいえない基準、性能なのではと思います。

 

では、環境や健康、住まいの温熱性能、省エネルギーなどを重要と捉えている工務店、設計事務所はどういった基準で取り組んでいるのかというと、国以外が定めている民間の団体や研究機関の定めた基準や指針を参考に家づくりをしています。(正確には適宜計算をして暮らしに求める温湿度やエネルギーをオーナー様と共有して家づくりを進めているので基準や指針はあくまでも参考程度と考えていると思います。)

繰り返になりますが国が定めているものはこの等級4までになります。しかし上記のように国以外の協会や団体が独自に示している基準、指針がありその中でもとっても有名な一般社団法人HEAT20という団体のHEAT20外皮グレード(G1、G2、G3)というものがあります。

こちらも性能を比較しやすいように平成28年度基準と同じように専門用語の数値で表されていますので参考までに紹介しますと、

 

G1グレード  外皮平均熱還流率 UA値=0.56 W / (㎡・K)

G2グレード  外皮平均熱還流率 UA値=0.46 W / (㎡・K)

G3グレード  外皮平均熱還流率 UA値=0.26 W / (㎡・K)

 

・・・やっぱり、数字だけ見てもピンとこないですね。こちらについても馴染みよく見れるように先ほど同様、室温(気温)に置き換えてみることができます。

 

G1グレード 「冬期間の最低の体感温度がおおむね10℃を下回らない」

       「冬期間、住宅内の体感温度*1が15℃未満となる割合が15%程度」

G2グレード 「冬期間の最低の体感温度がおおむね13℃を下回らない」

       「冬期間、住宅内の体感温度*1が15℃未満となる割合が10%程度」

G3グレード 「冬期間の最低の体感温度がおおむね16℃を下回らない」

       「冬期間、住宅内の体感温度*1が15℃未満となる割合が2%程度」

 

 

やっぱり室温に置き換わるとわかりやすくなってきますね。ただし、こちらはあくまでも暖房の方式などを色々と条件を設定したり、温度ムラなどを考慮したりとあくまでも目安と捉えていただきたい数値となります。

 

弊社の施工事例にもある省エネ住宅の世界的な基準でもあるPASSVE HOUSE(パッシブハウス)は上記のような外皮平均熱還流率の数値でのグレードではなく暖房や冷房にかかるエネルギー量などにより性能を比較していきます。

ちなみに、今の『CAC建築工房』での家づくりではHEAT20 G2グレードを最低目標としています。家づくりにおいて断熱などの性能をしっかり確保していくことによって住まいの環境が向上し健康的にも暮らし的にも快適になるとともにエネルギーの使用も抑えることができるので金銭的にも環境的にも負荷の少ない住まいとなります。

国がこういったことに力を入れているのにはやはり地球の環境やエネルギー問題の改善を進めたいというのが大きいからと考えています。

 

【これからのベーシックとは・・・】

 

 

さて、本題の国交省のニュースの件に。とっても簡単に言ってしまうと「国の定めている現行の最高等級4よりももっと上の等級をつくり、国の動きとして意識を高めてもっと省エネを進めていきましょう。」いうことです。上の等級というのが等級5、等級6、等級7。では、この上位の等級の基準は?というところですが、これが先ほど説明したHEAT20の性能とZEHという基準を参考に決めていくことで検討を進めるようです。

 

ZHE基準    外皮平均熱還流率 UA値=0.6 W / (㎡・K)  ・・・等級5

G2グレード  外皮平均熱還流率 UA値=0.46 W / (㎡・K) ・・・等級6

G3グレード  外皮平均熱還流率 UA値=0.26 W / (㎡・K) ・・・等級7

 

(静岡での数値のため建築を考える地域によって性能値は変わってきます。)

 

『長期優良住宅』の基準も等級4から等級5へと移行する見直し案も発表されています。

参考に国交省の資料を・・・(静岡は7地域という枠に分類されます。)

より、高い性能基準が定められていくことはとっても大切なことですが、これまで色々な基準の見直しが通ってこなかったことを考えると今回は是非とも本格的な基準の変更に至ってほしいと思います。

 

なんにしても先進的な家づくりを日々考えて取り組んでいる工務店や設計事務所などのつくり手の人たちからすると変更後の等級も当たり前の性能で決して高い目標ではないということは言えると思います。。

 

【家づくりの進め方は・・・?】

 

 

こういったように、今後、脱炭素社会に向けて色々なところで基準が見直されこれまで以上に速い流れで先進的な家づくりへと移行していくのではないかと思います。(10年前に最新だった考えや性能への取り組みは今ではどんどん新しい考えにブラッシュアップされています。)

 

耐震性能の考え方についても年を追うごとにどんどん変化していますね。大震災を経験しその体験を無駄にせずにブラッシュアップし、今では構造計算を用いた耐震等級3が多く聞かれるようになっています。

 

どんな性能も基準はあくまでも基準。基準が最高性能ではありません。省エネルギー性(断熱性能)、耐震性など家づくりにおいての性能面については、今できることは最大限に検討し家づくりを進めていってほしいと思います。

 

ベース(基本)となる性能面をしっかりと確保したうえで将来のことや暮らしのことをいっぱい想像して家づくりを進めていってください。

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