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Vol.12 背筋も凍る「家」3選。怖くて、もう、帰れない……。 

春は出会いと別れの季節。コロナのせいで、歓送迎会もおいおいと開催できない状況ですが、心構えくらいはビシッとしたいものですね。ライターのタラです。

さて今回は、趣味全開のあの企画第二弾。趣味と実益を兼ねた、小説紹介です。

本来、安心できる場所であるはずの「家」が恐怖の空間に変わる? 何故かホラーが多い「家」がタイトルに入った小説から三作品をご紹介。三者三様の恐怖を、ご堪能あれ。

 

 


1『紗央里ちゃんの家』  矢部 嵩

 

<あらすじ>

父と二人、毎年の恒例となっている従妹の紗央里ちゃんの家に遊びに行った僕。台風が直撃する中、激しい雨を見つめていると、何となく陰鬱な気持ちになる。一年ぶりの紗央里ちゃんの家。みんな、元気だろうか?

しかし、出迎えてくれたのは両手を血まみれにした叔母さんだった。生魚をさばいていたと言うが、家の中は異様な臭いが充満している。さらに、姿の見えない紗央里ちゃんの所在を尋ねると、「わからない、急にいなくなった」とはぐらかされる。何を聞いても「大丈夫じゃないか」とへらへらする叔母。

この家は何か変だ。洗面所の床に落ちていた指を偶然見つけた僕は、取りつかれた様に家探しを始める。家のいたる所にバラバラにされた体のパーツが隠されていて……。

グロテスクに彩られた、少年の悪夢の様な四日間。紗央里ちゃんは一体どこに?

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かなり気色悪い物語です。グロテスク表現も多目で、気持ち悪いのが苦手な人は注意。しかし、表現で言えば、登場人物の狂いぶりの方が、気持ち悪い。化物が出てきてワーツみたいな感じではなく、こちらの常識が通用しない感じというか。

正直、叔母も、その旦那の叔父も、同行している父も、家に残してきた姉も、紗央里ちゃんも、みんなイカれています。無垢で無知な少年である「僕」の視点を通すことで、その異様さ、不気味さが一層如実に語られます。

親戚の家に遊びに行く。そんな当たり前の行事が怖くなることを請け合いです。

 

2『ししりばの家』  澤村 伊智

 

<あらすじ>

学生時代の友人と偶然再会し、家に招かれることになった果歩。夫の帰りを待つばかりの憂鬱な日々にあって、気の置けない友人と旧交を深める時間は癒しとなった。ただ一つ、その家に積もる砂を除いては。明らかに異常な光景だったが、友人は砂を気にすることもなく、当然のように振るまっている。変なのは私か、友人か、それともこの家か?

一方、その家をじっと監視する男が一人。何をするでもなく、ただ無力感にさいなまれながら、家を見続ける。彼はかつて、その家に関わったせいで、脳内に砂が浸食してくる感覚に悩まされ続けていたのだった。しかし、自分にはどうすることもできない。

そんな折、彼の元に若い女性が現れて、「砂の呪いを解いてあげる」と言われ……。

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一転して、こちらはがっつりと怪異が登場する、いわば王道的ホラー小説です。とにかく「砂」の描写が心理的にキます。むず痒いというか、分からない何かがまとわりつくような感じ。「さああ」「ガリガリガリ」という砂の音が、本当に聞こえてきそうです。

本作は、女性霊媒師・真琴と琴子の活躍を描く「比嘉姉妹シリーズ」の三作目。とは言え、この作品から読んでも全然楽しめます。

物語自体は非常に現代風にも関わらず、そこに怪異やら幽霊やら化物の類が出てくるので、妙なリアリティを持って迫ってきます。

謎が二転三転していくので、ページをめくる手は止まりません!

 

3『墓地を見下ろす家』  小池真 理子

 

<あらすじ>

安いのには理由がある。

八階建ての瀟洒な新築マンション。全戸南向きでバルコニー付き。広々としたリビングに独立キッチン、収納付きの洋間二部屋の2LDK。交通の便も充実しており、学校も商店街も病院も徒歩圏内。ペットを飼うことすらできる。そんな夢のような物件に移り住んだ加納一家。全てが完璧だった。しかし、その完璧さを台無しにするモノが一つ。それは眼下に広がる広大な「墓地」だった。

背に腹はかえられない。他で探せば倍以上しても不思議ではない物件が、わずか3,500万円で手に入ったのだ。文句を言えた義理ではないが、墓地を見下ろすたびに憂鬱になる。

引っ越し当日に飼っていた文鳥が死んだ。不吉な前兆はあった。そして、少しずつ一家に不穏な影が忍び寄り、ついには最悪な事態が訪れて……。

 

ネットなどで「怖い小説は?」と検索すると、必ずと言っていいほど名前が挙がる本作。1988年刊行なので30年以上前の小説ですが、この作品を推挙する人が多いのには納得。はい、怖いです。恐らく、ナニかが少しずつ近づいてくる感が、日本人の根源的な恐怖を刺激するのでは? と思っています。

友人の実家の真裏がそれこそお寺で、彼はよく金縛りに合うと言っていました。壁に顔型のシミが浮かんだり、ラップ音がしたり、妙な影を見かけたりもあったそうです。

土地にいわくあり。みなさんの家は、大丈夫ですか?

 

 

いかがでしたでしょうか。恐怖は、人間のもっとも古い感情だと言われています。小説に限らず、ゲームでも、マンガでも、映画でも「ホラーモノ」は無数にあります。やはり、怖いと分かっていても、心の奥底では欲する何かがあるのでしょう。

絵も音もない、小説ならではの恐怖体験。あなたが最も怖かったのはどの家?

 

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