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Vol.30 家をもっと自由に。イッツ・ドマ・ライフ。

明けましておめでとうございます。本年もゆるりと、家づくりや暮らしに役立つ?ネタを書き散らしたいと思っています。ライターのタラです。

さて、新年一発目は何を書こうかと悩んでいたところ、友人に相談してみました。何かネタはないか、と。すると友人は「今は土間だな」と言うのです。ちなみにその友人は、当コラム最多出演のE君。少し前まで、ビルトインガレージを推していた彼です。「それはもういい。今は土間。オシャレな土間」、だそうです。

という事で、新年に相応しいかどうかはわかりませんが、今回は「土間」について考えてみます。


普段暮らしていて、土間を意識しますか? 思い返してみると、生まれてこの方、僕自身は土間がどうだと考えたことがありません。そもそも土間って何? そのレベルです。しかし、日本の住宅おいては、ほとんど家に土間はあります。

土間とは、端的に言えば「屋内において、床板を敷かずに土足で歩くスペース」のこと。現代の住宅事情に照らし合わせれば、それは玄関です。

日本に暮らす以上、家にあがる際に靴を脱ぐことに何の疑問も持たず、当たり前の動作です。意識すらしません。だからなのでしょう。単なる「靴を脱ぐ場所」程度にしか、土間を認識したことがないのです。別にその良し悪しを問いたいわけではありません。最初から無いもののことは考えようもありません。

などとあれこれ考えてみて、ちょっと待てよ、となりました。

何度も書いてきましたが我が家は某商店街内にあるおもちゃ屋です。屋内への出入りはシャッターのみ。店舗を抜けて、奥にある扉の向こうの居住スペースへと入る造りになっています。当然、店舗内は土足です。もしおもちゃ屋を辞めてしまえば、そこは土足で歩き回る「土間」スペースとなります。店舗という特殊な条件下だったために思い至りませんでしたが、いわゆる一般住宅に比べて、かなり土間の恩恵があったのわけです。とはいえ、現状店があるため、それ以上の使い道はないんですが……。

 

 

そもそも、土間って、何のためにあるのでしょうか? 時代劇や日本昔話などよく見かける、いわゆるイメージの中の土間って、↑こんな感じですよね。

当時の日本家屋の大半は木造建築。ということは、燃えやすいわけです。そんな屋内で火を使うのは大きな危険が伴います。そこで活躍したのが土間。土や石が敷かれている土間は屋内に比べて燃えにくく、かつ汚れても掃除が簡単です。ゆえに、土間にかまどや水場を設け炊事場としたり、農作業のスペースとしたのです。日本家屋の特性を考えた、非常に合理的な選択といえるでしょう。

 

歴史を遡れば縄文時代の竪穴住居がその始まりと言われています。とは言え、当時は床上というものはなく、そもそも床全体が土間扱い。その上に藁やゴザのようなものを敷いて暮らしていたようです。

少し時代が進み、弥生時代にはすでに「靴(履物)を脱いで生活する」習慣はあったとのこと。これは家の造りよりも、多雨で高温多湿な日本の気候によるものが大きかったようです。蒸れて気持ち悪いから靴を脱ぐ。こんなシンプルなことが弥生時代から続いているというのは驚きです。

そして上記写真のような土間がやっと一般的になるのは江戸時代。その後、家屋は少しずつ西欧化していき、ガスや水道が整備され、炊事洗濯は屋内での作業となり、広い土間は姿を消し、現代の形式へと様変わりしていくことになります。

情報の抜けや齟齬はあるかもしれませんが、土間の歴史の大体の流れはこんな感じです。必要だったから土間があった。必要なくなくなったから土間がなくなった。厳しいことをいえば、そうなります。

しかし、土足で歩ける土間だからこそ使い方は色々ある。炊事に使うばかりが土間ではない。そんな発想から、イマ、土間の新しい活用法が注目を集めているのです。

 

 

土間~キッチンをひと繋ぎにした「土間キッチン」や、その耐久性を活かして自転車やバイクの整備スペースとして使う「趣味土間」、さらにリビングや書斎を併設したり、愛犬のドッグランを設置するなんて大胆なアイデアまで。ちょっとインターネットをサーフすれば、今風土間のさまざまなレイアウト例が見つかります。正直、これといった制限がないので、自分のしたいように、好きなようにアレンジし、活用できるのが最大の魅力かも。

と、本来ならばここでアイデア集を写真付きで紹介したいところですが、残念なお知らせ。基本、フリー素材から引っ張ってくるのですが、今風の土間の写真がほとんどないのです。洒落た土間を持つ友人知人がいれば写真を撮らせてもらうのですが、すぐには見つからず。

文字だけでダラダラ説明しても伝わりづらい。ということで、アイデア集はネットにお任せするとして、今回は注意点やデメリットに焦点を当ててみたいと思います。

 

そもそもまず第一に考えなければいけないのは「費用」でしょう。ゼロから家を建てようとしているならば最初から広い土間を検討することもできますが、そうでなければリノベーションしなければなりません。家具を動かしてレイアウトを変えるのとはわけが違います。狭い玄関スペースを広げる工事が必要。そもそもの形や完成形によって価格に差異はありますが、100万円程度はかかるようです。DIYが流行っているとはいえ、流石に土間の拡張工事を自分でやるのはおすすめできません。やはり施工会社に頼むべきです。

 

 

費用に付随した話になりますが、やる前にしっかりとした利用イメージを作ることも大切。土間を広げました。やっぱり使いづらいからやめたい……が簡単にはできません。

一つの考え方としては、広げる土間ではなく狭くなる居住スペースの方を想像しておくのも手。当然ですが、家の敷地面積には限りがあります。その中で土間を広げるということは、逆に居住スペースを削ることになります。広い土間を手に入れても、住みづらくなったら本末転倒。家族が増えるのに部屋が減る。そんな矛盾した状況もありえるでしょう。ライフプランと将来設計をしっかりとすり合わせる。それが大事です。

 

そして実際に広い土間を作ってからも気を付けなければならないことが「底冷え」です。夏の暑さが軽減できる強味がある一方、冬の寒さには滅法弱いのが土間。地面に近い、というか地面そのものゆえ、寒さが直に影響します。何かしらの防寒対策は必要でしょう。土間の特性を活かして薪ストーブを置いたり、居住空間との仕切りを二重窓にしたり、土間にも設置できる床暖房もあるようなので、利用用途に応じた防寒対策は考えなければなりません。寒いから結局使わない、ではもったいないですもんね。

 

 

もう一つの注意点は「段差」です。通常、土間は居住スペースから一段下がったスペースです。靴を脱いで生活する日本式な暮らしをしている以上、そこには大なり小なり段差が生まれてしまいます。

小さなお子さんや高齢者がいる場合は、転落、転倒の危険性は高まっていまいます。そもそも今は良くてもやがて年を取ると、自分自身が上り下りが大変になる可能性があることも忘れてはいけないでしょう。

段差を低くすることもできますが、低すぎると居住スペースに土や泥が入り込んだり、水を流した際に濡れたりと弊害も……。

高すぎず低すぎず。一概に「この高さ」とはいえませんが、やはりある程度先々の暮らしまで見据えた造り、そのイメージは必要かもしれません。

 

 

確かにパッと見た感じ、今風の土間は洒落ているし、利用幅も広そうだし、書いていて欲しくなりました。ただ欲しいからと言って簡単には作れないのも事実。あれば便利かもしれませんが、未来の暮らしをしっかりと想像して、本当に必要か。作るならばどの程度の規模にするか。そこまで考えるべきかな、とも思いました。

何だか話があっちこっちに飛んでしましましたが、何はともあれ新年一発目。

今年も何卒よろしくお願いいたします。

 

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