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Vol.39 家が一つに玄関二つ? 二世帯“住宅”最前線。

ほんの数日前まで微妙な暑さが残っていたのに、いきなり涼しいを通り越して寒い日々に突入。

最近「秋らしいな」と感じる時期の短さに寂しさを覚える、春生まれなのに秋好きなライターのタラです。

当コラムのネタに困った時の駆け込み寺、友人のE君。何かないかと尋ねると、「今はやっぱり二世帯だろ」と思わぬ答え。最初はビルドインガレージ、次いで洋風土間、そして今度は二世帯。こうした彼の心境の変化は何故に起こるのでしょう。わかりませんが、今回はせっかくなので「二世帯」についてあれこれと考えてみたいと思います。とは言え、僕自身には今のところあまり縁のない話にはなりそうで、いささか不安ですが……気楽にお付き合いください。


 

以前も少し触れましたが、日中は赤い車に乗って、配達業をしています。仕事柄、様々な住宅に行き、荷物を届けるわけですが、その際少々困るお宅があるのです。

荷物の住所には、例えば「静岡市清水区〇〇〇町10-10 山田次郎」と書かれていたとします。僕ら配達員は地図を確認し、その住所へ赴きます。いざ現地に到着。表札を見ると山田さん宅です。さて、インターホンを押して呼びかけようとすると、玄関のドアが二つ。そしてそれぞれにインターホンが設置されています。よく見ると、郵便ポストも二つ。え、どっち? となるわけです。

建屋は一つ。表札は山田さん。山田さんが住んでいるのは確実です。しかし、玄関は二つ。両方山田さんです。もったいぶることでもないので進めますが、つまりオールド山田さん一家とヤング山田さん一家が暮らす、二世帯住宅です。

たいていの場合、どちらのインターホンを押しても、荷物自体は受け取ってもらえます。玄関は違えど、中では繋がっているのですから。しかし、稀に「隣だから、そっちのドアから呼びかけて」と言われることがあります。こちらとしては別段ごねるようなことでもないので了承しますが、もう一方が不在だった場合などは、ドッと疲れが押し寄せます。

「一緒に暮らしているんだから、受け取ってくれればいいのに……」

と内心思わないわけでもありません。

世知辛いなぁ。二世帯住宅の難しさを垣間見る瞬間です。

 

 

さて、日本一有名な「二世帯家族」と言えば、50年以上もお茶の間を楽しませ続けている国民的長寿アニメ、サザエさんにおける「磯野家」と「フグ田家」でしょう。僕が初めて観たのは、恐らく小学校低~中学年頃なので、それからでも30年以上放送が続いています。

しかしこのサザエさん、あまりに有名になりすぎて、もはや当たり前過ぎるためか、いささか不親切な部分もあると思うのです。

それは「家族構成」。サザエさんを初めて観た時のこと、ちょっと子供の頃を思い出してみてください。下図のように思っていた人も結構いるのではないでしょうか?

 

 

波平‐フネ夫婦の子供がサザエ。マスオと結婚し磯野家で同居しており、二人の間にカツオ、ワカメ、タラオという三人の子供がいる……のだと。

無論、アニメをちゃんと観ていれば、カツオとワカメは磯野姓で、タラオはフグ田姓。さらには、カツオもワカメもサザエのことを「姉さん」と呼んでいるのだから、ここが兄弟なのは説明するまでもなく明白です。

しかし、かなりの時期まで何の疑いもなく、カツオもワカメもサザエの子供だと思い込んでいました。当時はインターネットなどなく、放送中のアニメからしか情報を得るすべはありません。放送のたびに家族構成を説明するわけもなく、最初の思い込みのまま勘違いを続けてしまったのでしょう。

それは何故か。キャラクターの見た目の印象もあるでしょうが、恐らく、磯野家・フグ田家が形成している家族構成が当時ですら珍しくなりつつあったのかもしれません。ご承知の通り、実際はこう。

 

 

サザエ、カツオ、ワカメが波平‐フネの子供。サザエはマスオと結婚しタラオを授かり、実家である磯野家にて同居している(一説によると、マイホームの資金を溜めるための同居だとか)。

一軒の家に磯野家とフグ田家の二家が一緒に暮らしている状態です。そしてマスオは別に婿養子というわけではありません。ここが引っかけの肝だったのかも?

アニメを見ればわかりますが、この家には「磯野家」の表札しかありません。郵便ポストも一つです。しかし、フグ田家宛の郵便も荷物も届くはずです。配達員の視点から言わせてもらえば、初見時は迷うことでしょう。差出側が「磯野家様方気付・フグ田サザエ」と書いてくれれば問題はないのですが。あ、少し話が逸れましたね。

 

 

今回改めて感じたのは、そもそも「二世帯住宅」というもの自体に勘違いを持っていたということです。先述した「一軒の家に玄関も郵便ポストも二つ」に違和感みたいなものを覚えたことが無知の証。

読んで字のごとし。二世帯住宅とは、二つの世帯が暮らす住宅のこと。極論、二つの異なる家族が一軒をシェアしているような状態です。

オールド山田さんとヤング山田さんという親子の二世帯ではなく、山田さん一家と関係ない川村さん一家が共に暮らす形もあり得る、ということです。

そのために、家自体は一軒でも玄関を二つに分けて、きちんと線を引くというのは別段不思議な話ではないわけです。むしろ、こちらが正式とも言えるでしょう。

まあこれはあくまで言葉の定義上の話なので、無関係の二家族が暮らす二世帯住宅が何軒ほどあるのかはわかりませんが、建てた家の一部を貸し出すことで家賃を得るという形を取っている人もいるようです。

とはいえ、それはあくまで言葉尻をあえてとらえれば……という話。実際にはサザエさん一家のように家一軒に二つの家族が暮らす状態を「二世帯住宅」としても間違いではありません。あくまで形の問題。

実際、昨今の二世帯住宅は……

キッチン・玄関・浴室など、すべての生活空間を分ける『独立型』

玄関など一部を共有しつつ、リビング、キッチン、浴室などを分ける『共用型』

すべての部屋や設備を共有して使用する『融合型』

の三つの型が主流になっていると言われています。先述した玄関二つパターンは独立型、サザエさん一家は融合型ということになります。

 

ここでまたまたちょっと余談。別居と同居の違いについて。以下をご覧ください。

両図ともに二階建ての二世帯住宅。青い家は玄関が分かれており、一見すると独立型。しかし、生活空間の設備はすべて共用です。

一方、緑の家は玄関こそ一つですが、生活空間はすべて別。共有型あるいは融合型に見せて、内実は独立しています。

ともに、先述の3パターンには当てはまらない形です。では、青い家と緑の家。法律上、どちらが「同居」でどちらが「別居」扱いとなるでしょうか? Thinking Time……………。

 

 

 

正解は青い家が同居、緑の家が別居の扱いになります。

住宅の構造上、廊下や階段などでつながっているかどうかに関わらず、キッチンや風呂などの「生活用設備」を共用して生活している状態を「同居」と定義することになっているそうです。

 

 

独立型だろうが融合型だろうが、一つの家で二つの世帯が暮らすというのは、多かれ少なかれ摩擦は生まれるでしょう。創作物やネットの相談サイトでも、「相手の親と一緒に暮らす」ことへの不安や不満、問題点は常々議論の的になります。

少しでもスムーズに事を進めるために、分ける部分は分ける、共用する部分は共有する。プライベートやプライバシーは確保しつつ、協力しあえるものはする。頼る頼られる。甘える。世話になる、世話をする。そうして少しずつ家族になっていくのかもしれません。

 

まあ、僕自身は妻一人との暮らしすらまともに攻略できなかったわけで、偉そうなことは何一つ言えないのですが……。はい、お粗末さまでした。

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