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木の外壁のすすめ。

みなさん、外壁に「木の板」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?

木の板を外壁に使用した『木板張り』。

四季のある日本の美しい風景ととても相性の良い魅力的な素材の木の板。

自然素材のもつ経年美化や、永続的な管理、メンテナンスの容易さなど

お勧めするに値する素晴らしい点が多い一方でこれまで少し懸念されがち

あった理由であるデメリット?注意点なども勿論ありました。

 

今回はそんな『木板張り』について色々お伝えしてみようと思います。

家づくりの外壁選びについて『木板張り』の魅力や注意点を把握した上で、

ぜひとも家づくりのお役に立てていただければと思います。

 


色々ある外壁・・・


ちょっと気にして周囲の家々を見渡してみると

サイディング、ガルバニウム、塗壁、木板張・・・

住まいの外壁には多くの物が使われていますね。

皆さんはどんな基準で外壁を選んでいきますか?

 

サイディング

建材と言われ〇〇風という家をつくりやすいのがサイディング。

洋風、南洋風、タイル風、石張り風、ログハウス風・・・

またどこかで触れていきますが、基本的には色々な素材の雰囲気を

似せてつくった外壁の建築材料(工業製品)と思ってください。

タイルに似せたり石や木の雰囲気を出したり塗壁や金属の様子

までも似せてつくることができます。

 

塗り壁

左官屋さんがモルタルやサイディングの下地にコテで素材を塗りつけていく塗壁。

そとん壁、シラス、漆喰とか珪藻土って聞いたことがあると思います。

細かく分けていくと色々ありますが今回は塗壁と総称でお伝えします。

 

金属外壁

昔でいうトタン、鉄板葺きですが近年ではガルバニウム鋼板と呼ばれる素材を

使用しており耐久性も改善され、色々な形に整形し外壁として用いられています。

屋根に使う金属素材と同様なものになります。

 

木板張り

その名の通り木の板を縦や横に並べたり、板と板を重ねたり、時には

隙間を開けながら打ち付けていく(ファサードラタン)納めもある木板張り。

材種、表面の仕上げなど種類は多様にわたり、日本各地での地域性もある

風土に適した外壁となります。

 

・外壁種類のまとめ・・・

大枠の仕分けでもこれだけあり形状や材種など細目に分けていくと

数えきれないくらいの種類があります。

近年の新築においては大手メーカーで多く採用されるサイディングが

全体の8〜9割を占めていると言われています。

 

一方で、塗壁やガルバニウム、木板張りは工務店と呼ばれる地場の施工者が

多く採用する傾向にありボリューム的には少ないかと思います。

 

各素材、向き不向きな面や注意点など色々とありますが

今回はそんな色々な外壁の中でも『木板張り』の外壁についてです。

 


木板張りの素材とは・・・


先ずは木板張りの外壁に使う素材について。

こちらについては木の種類があるだけ選択肢もあると言ってしまえば

そうなりますが、主に使用する材種といえば、やはり杉を使用することが多い

と思います。もちろん古くから日本の建築によく使われている桧や松も

地域や建物によっては使われています。

伝統建築である社寺建築においては桧が使われることが多いです。

 


杉がよく使われる要因とは・・・


前述であげたように、外壁の木板張りには杉が多く使われています。

杉が杉が多く使われる要因として考えられるのが、

  • 日本の各地で杉の林があるということ
  • 水や腐食に強いこと、

があげられるのではないかと思います。

吉野杉、秋田杉、屋久杉、ここ静岡では天龍杉、と各地で有名な

杉の産地がいくつもあり、建築に携わっていない方達でもいずれかの

種類は聞いたことがあるかと思います。

古くから地域の素材、材木で地域の職人が寄り添い力を出し合って

築き上げてきた日本の建築の歴史を見返してみれば地域に生息している

杉林の材を各地で使っているということはごく普通なことで

何も特別なことではないのがわかるかと思います。

 

現代では物流というシステムが当たり前になっているのでレッドシダーという

海外の木や静岡においても秋田杉や吉野杉など広くに検討してしまいがちですが、

先ずは各々の地域の木材に注目してみるのもいいのかと思います。

時には杉ではなく違う材の検討も地域によっては出てくるのかな・・・とも。

静岡においては先ずは杉での検討からがいいのかなと思います。

しかし、静岡だからといって必ずしも有名な浜松の天龍杉ではなくてもいいと思います。

もちろん天龍杉が有名なのにはちゃんと理由もあり、そこを否定するという

ことではありません。先ずは地域の、静岡市、富士市の材料に目を向けて

考えてみてはと思います。

静岡以外の方々も地域に根付いた材種をもう一度見ないしてみるのも

いいと思います。

 


木が水に強い・・・?


他に杉がよく使われる要因として考えられる「水や腐食に強い」ということ。

木材には赤身と白太という部分があります。

木の中心の芯というところに近い部分で杉でみると赤い色をした油っけの多い部分が赤身、

木の外周部で皮に近い部分で白く柔らかい部分が白太という部分になりますが、

杉の赤みという部分はとても「水や腐食に強く」長持ちする素材となります。

桧が強いと聞くことがあるかとは思いますが、古民家や伝統建築の修理を経験し

古い建物の解体や現状の調査をして見てきた実体験から考えると桧よりも

杉の赤みの方が「水や腐食に強い」というのが言えます。

 


杉板を張ってみる。


では、外壁に杉の板を張っていきましょう。

ここで話題になってくるのがどのような張り方があるのかということですね。

サイディングなどの外壁の住宅が大半を占めるようになってしまった現代ですが、

皆さんも少なからず木板張りの外壁の家を見たことがあると思います。

いくつかあげてみると「下見板張り」「鎧張り」「縦板押縁張り」・・・

ちょっと変わったところだとすのこ状に木板を張る「ファサードラタン」

というものもあります。

これらの板の張り方を大きく分類すると木板を横に張るか、縦に張るか

というところになります。デザイン的な違いはありますがこの2種の特徴はというと、

横張りは木の水に対する弱点でもある木の切り口『木口』を守る納め方が選択できる

ということ、縦張りは外壁に当たった雨水の流れと木の目の向きが同じのため木の

表面の部分に対しては水を切りやすい向きでの納めとなる、というところでしょうか。

かと言って縦張りと横張りとで極端に耐用年数が変わるということはないかと思います。

耐用年数については建物の周辺環境、湿気の多さやメンテナンスなどの方が

大きく影響してきます。

施工上の注意点はそれぞれの納め方で変わってきますので、設計者、施工者さんに

よく相談して適切な施工ができるのであればお好みのデザインで選べばいいと思います。

 


様々な木の表情


さて、板の張り方によるデザイン的なところの次は板の表面の仕上げについてです。

板の張り方と同じくらい建物のイメージや周辺環境に与える影響が大きいのが

この表面の仕上げになります。

ざっと上げてみると、

  • 塗装仕上げ(膜をつくるタイプ)
  • 塗装仕上げ(浸透タイプ)
  • 無塗装
  • 焼杉

などがあります。

 

・塗装仕上げ(膜をつくるタイプ)

一般的に言うペンキでの仕上げになります。

水性、油性など色々な主材料の塗料が各メーカーから出されていますが

基本的には木の木目、表情はなくなります。

海外の白や青の木の外壁をイメージして頂ければわかりやすいですね。

歳を重ねるごとに美しく変化していく経年美化の様を味わうことはできませんが

お好みのカラーに外壁を仕上げることができるのがいいところでしょうか。

定期的なメンテナンスとして塗料の塗重ねが必要になってきます。

 

・塗装仕上げ(浸透タイプ)

オイルのように木に染み込んでいく塗料により表面を保護する仕上げになります。

木材保護塗料としてひろまっていて溶剤系や自然素材の塗料もあります。

浸透、染み込んでいくタイプなので木の表面、木目の表情や美しさを確保した上で

木材の保護もできる仕上げとなっています。

着色もできるためお好みのカラーに仕上げることもでき一般的に木板張りというと

こちらの仕上げ方法がよく採用されているのではないでしょうか。

 

こちらも定期的なメンテナンスとして塗料の塗重ねが必要になってきます。

前項の膜を作るタイプと違って浸透、染み込むということを考えると

メンテナンス時には当初の塗料との相性も少し気にして選ぶ必要があると思います。

同じメーカー、同じ商品の重ね塗り塗料が最適にはなりますので、長い年月

その商材が販売されていくかということも塗料選びの時に気を付けてみると

いいと思います。

 

自然素材系の塗料に焦点を当ててみても同様のことが言えますが、こちらは

より自然な経年美化を味わうことができ日本の風土や景色を考えると

とても魅力的な保護仕上げになります。

 

・無塗装仕上げ

名前の通り塗装をしないで木の板の持つ自然な色のまま仕上げ、木の板の表情や

美しい経年美化を楽しめる仕上げとなっています。

丸太から製材、乾燥された木の板の表面をカンナやサンダー、時には”うずくり”と呼ばれる

木の木目を浮き上がらせる加工により、より美しい表情に仕上げることもあります。

 

木板張り全般に言えることですが特にこの無塗装仕上げでは経年変化が

多く期待できるため耐久性の観点から使用する木の板の厚みに対して

少し気を使って取り入れることをおすすめします。

 

・焼杉

こちらはちょっと特殊な表面仕上げになり、材種に関しても杉の板が用いられる

仕上げになります。とはいっても、伝統的な木の板の表面の保護技法となります。

 

寺社仏閣や白川郷、美濃のうだつの上がる街並みのような伝統的な建物、街並みでは

古人の英知による各地の風土に合わせた耐久性や防災の技術が培われ、引き継がれて

きました。その一つで西日本でよく用いられてきたのが焼杉になります。

木の表面をあえて焼き、炭化層をつくることによって耐久性が増し、防火の観点からも

メリットの大きい仕上げとなります。

この表面の炭化層のつくり方、つまり杉板の焼き方には三角焼きやバーナー焼きなど

いくつか方法がありますが、この焼き方により炭化層の形成の仕方が変わり、耐久性も

違ってきます。単に焼杉ということで一緒くたにせずに製造過程にも気を止めてみても

いいと思います。もちろん木の板の厚みについてもです。

 


木板張りの注意点


家づくりにおける材料でオールパーフェクトな素材はありません。

木板張りについても同様、ここまで仕様や魅力をお伝えしてきましたが、

もちろん注意点もあります。

 

・先ずは防火について。

古くから木造が主体であった日本の建築は長い年月火災についての対策に

苦労してきました。そして地域、文化によって様々な対策を導き出してきており、

各地の伝統的な街並みではそんなところも垣間見ることができます。

現代においてはというと、外壁の防火についてはサイディングが一歩リード

いうところでしょうか。

燃えにくい素材として開発されたと言っても良いのかもしれません。

しかし、ここ数年『木板張り』についても一定の防火性能が確保できることが

証明されています。壁の表面の木の性能だけでなく、壁の中の素材などとの

合わせ技での性能にはなりますがちゃんとした検査機関による性能の確保も

なされております。

しかしながら、納まりや素材選定など十分な知識、技術、経験があった上での

採用が良いかと思われます。

 

・施工時の注意点

次にちょっと突っ込んだお話にはなってしまいますが、縦板張りとした時の

納まりの注意点。こちらはどちらかと言うと技術的なお話になってしまいますので

外壁全般の施工上の注意点としてまたの機会にお話しますが少しだけ・・・

これまで上げてき数々の外壁、どんなものでも言えますが、外壁の材料の一つ内側

(室内側)には通気層という換気や防水のための層があります。

この通気層の適切な確保のための施工方法が一部で見直されていますが

法や瑕疵保険関係の各検査時には突き詰めた施工方法でなくても許可が降りてしまい、

現行ではいわゆるグレーゾーンという範囲になってしまっています。

こちらの通気層は先にも述べたように防水の観点や建物事態の耐久性に大きく影響する

部分ですので、木板張りに関わらずどんな外壁でも注意が必要な項目になります。

 

・天敵、湿気について

最後にやはり木板張りの一番の天敵は湿気になります。

板の材種の選定、張り方、表面の仕上げ、色々と見てきましたがどんな事をしても

木材と湿気の関係には注意が必要です。

とはいうものの、前段部分の選択や施工方法が適切に行われていれば建物周辺の環境と

日々のメンテナンスによって他の外壁仕上げなんかよりもずっと長持ちする仕上げと

なります。

建物の周辺環境での注意点は、外壁に触れるほどの茂みや大量の荷物、無計画に

設置された物置など、木板張りの外壁の乾燥を阻害する環境、湿気を助長する環境を

つくらないということになります。

街中や古くから民家がくっつくように立ち並んでいる街道筋では敷地目いっぱいに

建物が配置されることもありますが、一般的な敷地においては配置計画の時、

隣地との間に適切な空間をつくるなど家づくりの計画段階にある程度加減できる

建築的なところと、荷物や物置の設置など暮らし方で配慮できるところがありますが

どちらも特段難しいことではないと思います。

また、塗料による仕上げの木板張りの場合、定期的なメンテナンスとして再塗装も必要と

なりますが、塗装仕上げ以外ののもの中には何十年と手を加える必要のないものも

あります。

ただし思いもよらぬ劣化も考えられるため、建物周辺などいつでも点検ができる環境を

整えていくのはメンテナンスの観点からも大切なことになります。

これについては、木板張りというよりは外壁全般に言えることだと思います。

 

庭の草むしりやお子様との外遊び。ちょっとしたついでにでも、外壁を少し気にして

見ていただけるだけで大分違うと思います。

 


木板張りの魅力


このように木板張りにも注意点はありますが、冒頭にお伝えしたようにそれ以上に

魅力も多くあります。

 

お勧めに値する魅力について少し深堀していきます。

 

先ずはなんといっても木板張りの素材は経年美化するということ。

長い年月をかけ素材が歳をとるとともに何とも言えない美しい変化をしていきます。

これは自然素材特有のもので同一材料でも周辺環境や建物の形状、方位、経過年月により

一つとして同じ表情にはならない唯一の物になり、塗料などの着色でつくる偽物では

決して表現できる風合いではありません。

(趣ある革製品の財布やバックもこれに当たると思います。)

そして、経年美化した素材は四季折々美しく変化する日本の風景ととても相性がよく

心地よささえ感じさせてくれます。古民家や社寺仏閣の古建築を想像して頂ければ

腑に落ちることだと思います。

また、里山のような自然豊かな環境や古民家の立ち並ぶ街並みに懐かしさや

心落ち着く気持ちになるのは美しく経年変化した素材の建物が自然の風景と喧嘩せずに

馴染んでいるからだと思います。

 

またそれは街中においても同じことが言え、遠くに見える海や山、少しでも豊かな環境にと

住まいの周辺に配置した植栽などの緑との関係に置き換えても同じことが言えてきます。

すべては豊かな環境をつくるために・・・ということだと思います。

忙しない日常から癒しを求め、自然豊かな観光地やパワースポットに訪れることがあると

思いますが、日々暮らしていく住まいにおいてこのような感覚が住まいで味わえる・・・

とっても、素敵なことですね。

木板張りの中でも無塗装や焼杉、浸透タイプの自然塗料による仕上げは

特にこの経年美化による魅力を期待できます。

 

(経年美化とは対照的に年月とともに衰えていくのが経年劣化。

人工的な工業製品の建築材料によくあるのはこちらの劣化に値するものだと

捉えています。)

 

そして、木板張りには気候風土や文化に合った素材、張り方があります。

静岡には静岡ならではの素材や仕上げがあり、それは各々の地域でも言えることに

なります。その地域性というのも魅力の一つになります。

また、地域でとれる素材で地域の職人の手でつくり上げることのできる木板張りの外壁は

木という素材がなくならない限り職人の手でいつでも再現ができ工業製品のように

廃盤という概念がないため永続的な維持、メンテナンスができるいうことも

大きなメリットになります。

 


まとめ:やっぱり木板張りは素敵。


ここまでお伝えしたように、木板張りには魅力がいっぱいあります。

住まい手も地域も豊かになる木板張り、興味のある方はぜひ採用を検討してみて下さい。

 

あなたの住まいが何十年後の未来の日本の景色に溶け込み、

風土、風景をつくる一つになれたら素晴らしいことではないでしょうか。

 

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